アジア山岳民族の村を尋ね歩き、保存食や植物利用の知恵を学ぶ里山文庫とともに制作した、アジア各地の伝統的な食に関するさまざまな記事を集めた冊子。
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ステートメント
タピオカを食べたことはあっても、原料であるキャツサバの存在を知っている人はどれだけいるだろうか。スーパーに綺麗に並べられた野菜よりも、いびつな在来野菜の方が豊かな味があることを、どれだけの人が実感したことがあるだろうか。
私たちが口にするものの一つ一つには物語がある。食べ物はどこから来るのか、どういう人たちが育て、どういう思いで受け継いできたのか。食べ物は国境を越える共通言語であり、その伝統と文化をを現代に活かす取り組みは、私たちの普段の暮らしやライフスタイルをとらえ直すヒントになるはずだ。農薬や化学肥料を使わずに食べ物を生産する知恵、目に見えない菌を利用した保存食、野のものを暮らしに取り入れる姿勢、農村部の集落で受け継がれるそれらは、過疎化、都市化、生活の西欧化のながれで担い手を失いつつある。手間暇がかかるから、収入に見合わないからといった理由で見捨てられてきたものを改めて学び、現代の暮らしに合った形で残していきたい。
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目次
3月 啓蟄&春分「野草文化」
幸せの国ブータンの食文化と植物の知恵
韓国のスローシティーと薬草の食卓
台湾の薬草文化を知る旅
4月 清明&穀雨「お茶がつなぐコミュニティ」
お茶を食べる
「壁のないミュージアム」 武夷山岩茶農家の住みびらき
宇治茶農家の食卓と、食べて美味しい「てん茶」の秘密
スイーツから覗くアジア
台湾の文化多様性とお菓子 フランス菓子と台湾菓子のユニークな繋がりを深掘る
5月 立夏小満「麦の辿る道」
パンの文化人類学
中国の麦と食文化概論
6月 芒種&夏至「漬ける文化」
台湾好きなら知っておきたい、「梅乾菜」「菜脯」「台湾茶梅」
伝統的な知恵を、都会の暮らしに取り入れる
発酵食としてのチョコレート / 台湾・屏東県の訪問記
7月 小暑&大暑「香辛料」
東西文化の交差点に見るスパイスと生薬
パクチー専門家に聞く、葉、花、種、茎、根っこの美味しい楽しみ方
地球の裏側からやってきた唐辛子が変えた食文化
8月 立秋&処暑「アジアの発酵」
米の発酵食品:黄麹、紅麹、黒麹取り扱い説明書
豆の発酵食品:納豆、テンペ、腐乳
麹を使わずつくる、南部玉味噌
発酵する東アジアの3日間
みやもと糀店×ヤスダ屋×里山文庫「豆を使った発酵食品」
風土に根付く味噌のテロワール
発酵する薬用酒が、現代インド人にもたらす効能
9月 白露&秋分「忘れられた穀物:雑穀」
台湾の粟と紅藜を訪ねて
日々の生活に雑穀を。“雑穀クリエイター”という仕事
対馬の「せんだんご」に学ぶ、テマヒマかけることの意義
10月 寒露&霜降「精進料理と菜食」
フレンチシェフの僧侶に学ぶ精進料理
植物に耳を傾けるということ。福島県・昭和村のからむしから学ぶ、植物と寄り添う暮らし
大文字山を、鴨川を食べる
11月 立冬&小雪「食品加工の知恵」
琉球の薬草とぬちぐすいに触れる旅
極寒でじっくり燻される鮭の「冷燻」
12月 大雪&冬至「酒」
ブータンと台湾原住民のどぶろく
客家の燻酒と韓国の薬酒
1月 小寒&大寒「世界のキッチン」
ヒマラヤ地域で見つけた、オフグリッドなキッチンと道具
旅でたどり着ける、一番遠い場所。建築家・デザイナーの齋藤名穂さんと歩く、南インドのキッチン
日本・台湾・韓国・香港の作家60名が描く、お気に入りのアジアの食べ物『MY FAVORITE ASIAN FOOD』
さいごに
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